私的宝盤17 Kings Of Leon / Only By The Night(2008)

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クローサー / Closer 
クロール / Crawl 
セックス・オン・ファイア / Sex On Fire 
ユーズ・サムバディ / Use Somebody 
マンハッタン / Manhattan 
レヴェルリー / Revelry 
17 
ノーション / Notion 
アイ・ウォント・ユー / I Want You 
ビー・サムバディ / Be Somebody 
コールド・デザート / Cold Desert 

 

「自分に都合がよいものばかりに触れていると、自分に都合のよい人間にしかなれない。」

ってサカナクションの山口さんが言ってたのを妙によく覚えていて、今も自分の中で大切にしています。耳の痛い助言こそ傾聴したり、自分が大切なものとは対極の物事を大切にしたり…。要するに、臭い物に蓋をせずにしっかりと正対していけば、更なる高みを目指せるということだと僕は捉えています。

 でもこれって、かなりハードルが高い。「つもり」になっていることが多い。できているって自分に言い聞かせて、本当に肝心な所は逃げている。自己バイアスって酔えば酔うほど止まらなくなる、謂わば麻薬みたいなもん。偏りに酔いしれた状態の「なんちゃって」の意識改革では、意味がない。

 結局そうならないためには、自分が変わるしかないような切羽詰まった状況に立たされ、自力で何かに気付き、行動を起こしていくしかない。変わることができる要素って外的、内的なものも含めて無数にあると思うのだけれど、その中の大きなひとつに、「目的意識」があると思う。つまり、自分はどうなりたいのかってこと。もちろん誰しもがよくなりたいに決まっているのだけれど、その気持ちがどれだけ強いか。内に在る目的意識が強ければ強い程、自分を丸ごと見つめようとするので、自己バイアスに限界を感じるようになる。そこで生まれる自分への諦めのような感情が、人を柔軟にしていく。「現実の厳しさ」ってやつの前では、もはや柔軟にならざるを得ないのです。

 

 このキングスレオンってバンドは、もともとサザンロックをやっていた、いわば泥臭いバンドです。けれど、本作で聴こえてくる音は、都会的で、洗練されている。彼らは自分たちが大切にしてきた「泥臭さ」とは対極にある「洗練さ」を求めたわけです。そういった大きな変容の根底には、ぶっちゃけ「売れたい」「評価されたい」ってのはあったと思うし、崇高な部分で言えば、「バンドをネクストステージに導きたい」って、強烈な思いがあったはず。この強い目的意識こそが、こだわって大切にしてきた既存のバンドの音作りを大きく変えたと言えるのではないでしょうか。結果的に、商業的にも、本質的にも、ここでの大変容は大成功だったと思います。

 個人的に洗練の極みは、③のセックスオンファイア。ヴォーカル(メロディ)の音数が少なく、楽器の音に関しても、かなり引き算されていると思う。題名はちょっと笑っちゃうけれど、リリース当時20歳弱の自分にとって、これだけ控えめな音作りで、こんなに生かした曲が存在したのは、衝撃だった。

 でも、この題名…笑。グラミーがこの曲じゃなくユーズサムバディだったのは、題名のせいもあったんじゃないかって思ってる笑。(ユーズサムバディもカッコいい!)

 リリースから10年以上経った今、改めて感じるのは、

 

 泥臭いバンドが作る洗練された音は、最高にクール。

 

ってこと。

 同時に、最高にクールな状態を維持することは難しいことだと思う。でも、色んな時期があるけれど、あがき続け、もがき続けることが大切なんだと思う。泥臭いKings Of Leonというロックバンドの、エッジーで洗練されたOnly By The Nightというアルバムを改めて聴いた今、僕は強くそう感じています。