私的宝盤❷ Feist / Metals(2011)

 ワン、トゥ、スリッ、フォ、たんたらーら、らん、らん…。

 そう、あのipodのCMの曲です。1.2.3.4で日本でも広く知られることになったカナダのシンガーソングライター、Feist(ファイスト)の4thアルバム。

 

Metals

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1."The Bad in Each Other"
2."Graveyard" (Feist, Mocky, Chilly Gonzales)
3."Caught a Long Wind" (Feist, Mocky, Chilly Gonzales)
4."How Come You Never Go There"
5."A Commotion"
6."The Circle Married the Line" (Feist, Brian LeBarton)
7."Bittersweet Melodies" (Feist, Mocky)
8."Anti-Pioneer"
9."Undiscovered First"
10."Cicadas and Gulls"
11."Comfort Me"
12."Get It Wrong Get It Right"

 

 いろんな人と作ってますね。て言っても、モッキーとチリーが主か。

 前作も前々作も知ってるだけに、アルバムタイトルが衝撃だったこと、今でもよく覚えています。あのゆるふわ?系のファイストが、Metals?

   アルバムタイトルからも予想できるように、当然個々の楽曲、作品に漂う空気はヘヴィ。常にずん、ずん、ずんって感じ…。まるで地べたを這うようにビートが刻まれ、それにファイストの浮遊感ある歌唱が絡みついていきます。不思議な感じ。②のGraveyardや、④のHow Come You Never Go Thereなんかに、ファイストがしたいことが出てる気がします。メタル=重厚さとするならば、ドスドス、テラテラ鳴らさなくても、めっちゃメタルしてます。

 一方で楽曲の美しさも本当に素晴らしい。③⑥⑦あたりは、神がかり的な美しさを放ってます。特に⑥のThe Circle Married the Lineは、やばい。題名はいみふだが、やばい曲を作ったもんだ。

 ⑤は正に『実験的』って言葉が似合う曲。Bメロのこここす、こここすってなんや?ちょっと笑っちゃいます。

 

 Metalsの意味を、ちょっと考えてみた。複数形だから、きっとファイスト流メタルが集まった作品なんだと思う。ひとつ言えるのは、今までと異なるアプローチをした、実験的なアルバムってこと。

 でもどんなコンセプトで作品を作ろうと、ファイストらしさは変わらないし、きっと変えられない。ならば、もはや変わる必要はないことに気がつく。大抵の場合、行き着く先はそうなると思う。でも、変わろうとすることは決して無駄じゃなく、自分を豊かにすること。ブレたその幅だけ、自分は広がるから。

 今までと違うことを試みたからこそ生まれた、重厚な美しさ。ヘヴィビューティ。間違いなく、ファイストのキャリア最高傑作。

 

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6."The Circle Married the Line"…円は、線と結婚しました。