私的宝盤❼ Radiohead / The Bends(1995)

    Radioheadと言えば、Ok Computerって人は多いかもしれない。でも僕は、断然こっち派。

 

The Bends

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1."Planet Telex"
2."The Bends"
3."High and Dry"
4."Fake Plastic Trees"
5."Bones"
6."(Nice Dream)"
7."Just"

8."My Iron Lung"
9."Bullet Proof..I Wish I Was"
10."Black Star"
11."Sulk"
12."Street Spirit (Fade Out)"

 特別Radioheadのファン、と言うわけじゃないけれど、このアルバムは大好きだ。特に聴き漁っていたのは、大学3年頃。たまに講義をエスケイプしては、岐阜駅裏のバナナレコードまでバイクで足を運んでいた。そして、バイクに乗りながらいつもこのThe Bendsを聴いていた。10年前程の熱はないけれど、改めて聴いてみると、やっぱりいい。すうっと、心に浸透していく感じ。自分がこのアルバムを好きな理由を考えてみると、大きく3つあると思う。

 1つ目は、熱が伝わるということ。熱と言っても熱血ではなく、この熱はもっと屈折している。思うようにいかなくて、それに立ち向かうでもなく、逃げて、逃げて、やがて自分を蔑んで…。それでも生き続けたいと願う、そんな燻ったような熱。でも、燻りはしてはいるものの、熱を放出できないでいるから、めちゃめちゃ熱い。それはもうマグマ並に。表題曲のThe Bendsの中にこんなフレーズがある。

『僕は生きたい 呼吸をしたい 人類の一員に加えられたい』

 もう自分を人とも思えない。でも、みんなと同じ人でいたい。なんか、RADWIMPSの『棒人間』みたいな…。個人的にこの一節に、トムヨークのパーソナリティが色濃く出ている気がする。

 2つ目は、色んなタイプの曲がバランスよく散りばめられているということ。③④のようなアコギのバラードもあれば、⑤⑩みたいなポップなギターロックもある。NirvanaのSmells Like Teen Spiritsに匹敵するような⑦に、不穏でヘヴィな⑧など、どの曲も軒並みクオリティが高く、バラエティに富んでいる。そして、最後はStreet Spirit (Fade Out)で終わる。と思いきや、How Can You Be Sure?が今にも壊れそうな程に儚く奏でられ、Killer Carsでバンドが唐突に暴れ出して終わる。サブスクなんかじゃ勿体ない。絶対にフルで曲名をいじらずに聴くべきアルバムが、このThe Bendsである。あ、ラスト2曲はボーナストラックか。

 3つ目は、High And Dryという名曲があるから。この曲は、とにかく美しい。Radioheadがまだ若い頃(大学時代のストックらしい)の、あの時代の中でしか生まれなかったであろう、不思議な空気感を纏っている。今まで生きてきた中でたった一曲挙げるとするなら、僕は迷いなくこのHigh And Dryを挙げると思う。最も、彼らはこの曲の存在を忘れかけていたらしいが…。

 

 理由を考えてみるほど、だんだんよく分からんくなるし、ひどく陳腐に思えてくる…。そうです、本当に好きなものには理由なんてないのです。そんなこと分かってるのに、いちいち理由を探したくなるのは、それだけ大好きってことで。

 

 

 

☆おすすめ☆

3."High and Dry"…死ぬまで聴き続けたい。